しめ鯖そして塩加減


いらっしゃいませ。秋らしくなってまいりました。

 しめ鯖はいかがでしょうか。
ちょうど今できあがったところです。
いえ、ブランド鯖ではございません。富山湾のものですが、
鮮度とお味は保障つきでございます。

 近頃ブランド魚介が多く出回っております。前回書いた
サンマも釧路の「青刀(せいとう)」や歯舞の「舞さんま」
などお目にしたことございましょう。

 このブランド魚介の流行に火をつけたのが豊後水道の
「関鯖、関鯵」でしょう。他にサバでは四国の土佐清水市の
「清水サバ」。神奈川県三浦市松輪の「松輪サバ」。

 それから屋久島の「首折れ鯖」、これはマサバではなく
ゴマサバですが獲れたてなら刺身で食ってもうまい。
屋久島へ訪れたさいにはお試しください。

 鯖がお嫌いな方でも、しめ鯖ならいけるという方
いらっしゃいますね。

 しめ鯖をつくった事おありでしょうか。新鮮な鯖を3枚に
おろし、強塩(ごうじお)をあて、時間を置き塩を
洗い流してから酢に漬ける。

これだけのことですが、

重要なことは新鮮な鯖であることに尽きます。
わたしのところでは富山から朝獲れのものを航空便で送って
もらっております。夕方4時ごろ到着。

3枚におろして強塩1時間、酢に漬けること20分。
5時の開店時間には間に合いませんが、お客様には飲みながら
お待ちいただいております。
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強塩の時間や酢に漬ける時間は、作り手によってまちまち。
酢には昆布や鷹の爪をいれることもありましょう。

強塩は5~6時間、その後2日間冷凍するという方も
いらっしゃいます。これはアニサキスという寄生虫症を
防ぐためのことでありましょう。

先ほどから、「強塩(ごうじお)」と申しておりますが、
これは「べた塩」とも言いまして、表面が白く覆われるほど
たっぷり塩をまぶしつけることです。

べた塩とはべったりと塩をまぶすことから。

 では、今日は塩加減の種類とその呼び方を
ご紹介いたしましょうか。
「酢」についてはまた別の機会に。
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今日の品書き(目次)

【1】塩加減

【2】あとがき

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【1】塩加減

 人の体液の成分は海水の組成に似ていまして 成人の
体内には、約20gほどの塩があるんだそうですな。

 塩分控えめ、とよく仰いますが、この塩分は
維持していかなければならないということです。 成人で1日、
10~15g摂取しなければならない。
(厚生省は10gにしなさいといっているそうですが。)

 塩化ナトリウムの純度が高い塩、
いわゆる専売塩(生活用塩)よりも海水のミネラルが
残っている自然海塩の方が身体にとってよいのは当然。

 海水には約3.5%の塩類があり、その内の80%以上が
塩化ナトリウム、あとはニガリといわれる
ミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)。

 味も塩化ナトリウムとニガリ成分の割合でかわります。
にがりが多ければ苦味が増し、少なければ塩辛いわけです。

 さっき、専売塩と書きましたが1997年に塩の専売制は廃止に
なっております。
昨今は、各地の塩や輸入の岩塩などいろいろ出回って
おりまして、

驚くほど高価なものもございます。こちらもブランド流行り
であります。

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 さて、料理において塩は、味の基本であります。
かの北大路魯山人(1883-1959)も記しております。

 「・・・塩には素材そのもが持っている天然の美味を
引き出す働きがある。洋の東西を問わず、料理における
最大の眼目は塩の使い方である。・中略・古来、料理の極意を
塩梅(あんばい)といい、手塩にかけるという。塩こそ
あらゆる美味の決めてといって良い。・・」

 塩は
 美味を引き出すだけではなく、他にも調理における効用が
ございますね。

・水分を引き出して生臭みをとる。(魚や肉)
・ぬめりを取る。(魚介類)
・たんぱく質の凝固を促進、身くずれを防ぐ。(しめ鯖も)
・長期保存に使う。(漬物など)
・しんなりさせる。(野菜など)
・色よく茹でる。(野菜など)

 等々が、おもいつきます。

 それでは、塩加減の種類から。
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 ◎塩ひとつまみ

 レシピを読むとに「塩ひとつまみをいれて、、」などと
あります。一応決まっとります。指三本(昔、指三本で
総理大臣をおやめになった方、いらっしゃいましたが、
関係ございません。)でつまんだ量。

大体、1gくらい。小さじ1/5。手秤(てばかり)といいます。
計量器を使わずに計るのです。 目ばかりもあります。

 では、塩少々は。・・親指と人差し指2本で
つまんだ量ということになっております。約0.5g。
小さじ1/8~1/10。
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 ◎紙塩(かみじお)

 まな板に塩をふり、霧吹きで軽く湿らせた和紙を敷く。
その上に材料を並べ、湿らせた和紙で覆い上から塩をふる。
均等に塩を回らせる知恵。
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 ◎ふり塩(じお)・あて塩(じお)・尺塩(しゃくじお)

 ふり塩は
 材料に塩をふることですが、「振る」という語を嫌って、
「当て」とあてたのがあて塩。「スルメ」を「アタリメ」、
「胡麻を擂(ス)る」を「胡麻をあたる」などというのと
いっしょ。

 塩をふるのには、材料に対してまんべんなくふらなければ
なりません。手のひらを斜め上向き、指を少し丸め塩をのせ
指のかすかな隙間から振り落とします。
材料に対して30cm(=1尺)上から降るので尺塩。
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 ◎ひと塩(しお)

 軽い塩のこと。たとえば鯵の干物とか塩鮭など一般的な
塩気のものがあるとしましょう。それよりも、塩気が少ない
ことでしょう。大体1~2%くらい。

 甘塩というのもありますよね。薄い塩味の干物などを
甘塩の○○、として売っておりますが、どの程度の塩加減を
言うのかわかりません。

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 ◎たて塩(じお)

 これも、均等に塩をゆきわたらせる方法です。
材料を食塩水に浸します。海水程度の塩分にします。
この塩水を立て塩といいます。

 釣をなさる方は、釣った魚を開いて たて塩に
つけこんでから干物をつくった事おありでしょう。

 きゅうりなどの野菜をしんなりさせたり、味付けたり
するのにもつかう方法です。塩分の濃度は適宜、変えますが。
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 ◎塩もみ

 材料に塩をふって、しんなりしたら軽くもんで水気を絞る
こと。キュウリやナスの塩もみ。蕪の即席漬け。などが代表。

 酢の物に使う野菜などの下ごしらえ にも利用しますが、
たて塩のほうがていねいな仕事といえるかもしれない。

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 ◎強塩(ごうしお) ◎べた塩(じお)

 先ほど出てまいりました。

 脂があって身の厚い魚ですと少々の塩では出てきた水分や
脂に流されてしまいます。

 たくさんの塩ですと、魚から出た水分で濃い塩水となり
細胞の内部に到達しさらに水分を引き出します。
これで臭みも抜け、身がしまるのです。

 防腐効果もありますし、すでに話しましたように、
たんぱく質を凝固させうまみ成分を閉じ込めることと
なるのであります。

 しめ鯖で言えば、次の作業、酢に漬けたとき、
酢が必要以上に入り込むのを防ぐことにもなります。
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 ◎呼び塩(よびしお)

 これは、塩抜きをするためにやることです。あるいは塩を
抜きすぎないためにも呼び塩をします。

 たとえば塩蔵品から塩気を抜きたいときに、真水に
つけますと、水っぽくなってしまうことがあります。
塩分濃度の差が大きいためです。

 これを薄い塩水(大体0.5~1.5%程度)につけますと、
塩分濃度を、一定にしようと働き、食品のほうの塩分は
薄い塩水のほうへ移動するというわけです。

 浸透圧(しんとうあつ)てやつですな。野菜をしんなり
させるのも浸透圧によるもの。

 野菜の細胞は半透膜(はんとうまく)という膜で
おおわれており、その内外にある液体の濃度が違う場合、
両方の濃度が同じになろうとする。

 この同じになろうとする力を浸透圧というのです。
小学校か中学校だったかで勉強しましたね。昔々。
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 ◎塩焼き ◎塩ゆで ◎塩煎り(しおいり) ◎塩蒸し

 ・塩をふって焼くのが塩焼き。基本のことですが意外に
難しい。材料の持ち味をいかさねばならぬのですから。

 材料の重さに対して2~3%なんて言われておりますが、
そう単純なことでもない。材料の鮮度や種類にもよりますし、
いつ塩をふるのかだって影響しますす。焼きはじめる何分前が
いいのとか。

 ・塩を加えて茹でることが塩ゆで。枝豆やパスタを茹でる
ときやってますよね。

 私どもは塩を加えて材料を下ゆですることしばしばあります。
アクや臭みをぬいたり色よく仕上げたいときなど。

 ・塩煎り。煎り(いり)の漢字は 炒り(いり)とも
かきます。

 焙烙(ほうろく)をご存知でしょうか。
今でも荒物屋さんで売っていますが昔はこれを
よく使いましたな。素焼きで出来た浅い鍋です。小さめの
土鍋をごく浅くしたようなヤツ。

 豆やぎんなんをこの焙烙で煎ったものです。香ばしくて、
適度に塩味がつきますから塩煎りというのもオツなものです。
素朴なうまさとでも申しましょうか。

 ・塩蒸しは魚介類に塩をふってから、あるいは塩水に
浸してから蒸しあげることです。素材の持ち味を活かして
ふっくらと仕上げます。割り下やポン酢などを添えることが
多いです。

 中華料理でもありますでしょう。蒸篭(せいろ)に入れて
蒸す魚の塩蒸し。

 ・塩釜焼き も 焼くのですが仕上がりは蒸したものに
ちかいわけです。
キャンプなどの定番でしょ。塩に卵白や片栗粉を混ぜて練り、
材料を包んで蒸し焼きにします。 

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 ◎化粧塩(けしょうじお) ◎ひれ塩 

 化粧塩とはお化粧をする前に肌を整えるため
顔にぬりつける塩。
というのはウソですからわすれてください。

 魚を塩焼きするときに背びれ、尾びれ、胸びれなどを広げて
形を整え指で塩をすりつけます。ひれは焦げやすいので
塩をつけるのです。

 塩の部分の焼き上がりが白く仕上がってあたかも
化粧したよう、で化粧塩。ひれの部分につけるからひれ塩とも。

 化粧塩を嫌う方もいらっしゃいます。丸ごと食べるとき
この部分の塩が邪魔だとおっしゃいます。厚化粧は嫌いなんだ
という方ですな。

 ◎塩加減、縷々お話してまいりましたが、
今日はこのあたりがしおどき でございましょう。

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【2】あとがき

 
 しめ鯖の話をしようとはじめたのですが、途中で塩の話も
お届けしたいと思い、変えてしまいました。

 話は しめ鯖に戻るのですが、これは「酢じめ」なのか
「塩じめ」なのか。「しめる」というのは
「水分を減らせて身をしめる」ことです。

 塩でしめる時間が長いから塩じめ かも知れない。でもね、
魚を酢でしめる前には必ず塩じめをするのです。ですから
「酢じめ」でいいのかもしれません。

 酢じめの工程には塩じめの作業がふくまれているわけです。
塩は魚肉たんぱく質 の保水性を高めます。その後酢を
加えるとたんぱく質は変性して身がしまることになるのです。

 酢だけですと酸性が強すぎて凝固しにくくなるという
ことです。塩と酢の共同作用で身がしまるということですな。

 

 

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