秋味・「サケ」と「シャケ」
先日は失礼いたしました。カラスミ作りの長い講釈を
お聞かせしてしまいました。作りかたは 本当は3行で
すんでしまうんですが。
「塩漬け1週間、塩抜き1週間、乾燥は脱水シートを利用して
2週間。」
これなら1行です。初めての方にも試していただきたくて、
あのような長いものになってしまいました。
カラスミの完成まではもう少しお待ちいただかねば
なりませんが、
今日は「秋味」をご用意しておりますので、後ほど
召し上がっていただきましょうか。
今すぐ出せって、仰られても。。。●●じゃあ ありません。
サケ(鮭)です。
ところでお客さん、
「サケ」と「シャケ」、どう違うんでしょうか。
「サボテンとシャボテンのちがいみたいなものだろ。」
「サボテン」と「シャボテン」はどう違うんですか。
「だから、サケとシャケの違いみたいなものなんだよ。」
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■今日の品書き(目次)
【1】秋味と鮭児
【2】サケとシャケ
【3】サケとマス
【4】あとがき
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【1】秋味と鮭児
秋になると海に出ていたサケは産卵のために川へ戻って
まいります。川に戻る前に沿岸で獲れたサケをアキアジ(秋味)
と呼んで珍重されます。
アキアジというのはアイヌ語のアキアチップという語から
転じたそうで、秋の魚という意味ですって。
秋鮭の中でもケイジ(鮭児)は絶品の誉れ高きサケとして
知られております。
近頃は何かと「幻の」がつきますが、ケイジ(鮭児)はまさに
幻のサケ。獲れるのは数千尾に1尾とか一万尾に1~2尾とか
いわれております。
その味は、柔らかくなめらかで全身がトロ状態であると、
よく表現されます。大きくて脂が乗っているのではなく、
小ぶりながら脂が行きわたっているということです。
「水産庁さけます資源管理センター」の調査によれば、脂肪の
比率は20~30% 。(通常のサケは2~15%)
大きさは2kg前後。(通常の秋鮭は3~6kg)。卵巣、精巣の
生殖器が未成熟でオスメスの区別がつきにくい、2~3年魚。
4年かけて日本の川へ産卵の目的で戻ってくるサケに比して、
ケイジの目的は不明。前出「水産庁さけます資源管理センター」
によるケイジの遺伝子データ解析では、
アムール川(黒竜江)系の可能性が、きわめて高いということです。
日本系サケは北太平洋を経てベーリング海やアラスカ湾を
回遊しますがアムール川系は日本近海やカムチャツカ半島を
回遊します。
アムール川はモンゴルを源流とし、中流部は中国と
ロシアとの国境。そしてオホーツク海にそそぐ、
全長4350kmの川。
近年は中国側の経済発展で河川の汚染が深刻に
なってきたようで、ケイジにも影響なかろうかと、
危惧しておる、あみ亭おやじです。
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■うまい鮭の中ではトキシラズ(時不知鮭、時鮭)、というのも
ありますね。春の終わりから夏にかけて獲れるヤツ。秋ではなく
時期はずれに取れるから「時知らず」。
これもアキアジと同じ、シロザケ。
岩手、三陸海岸を経て 太平洋沿いに北上、北海道沿岸に
5-6月ごろ到達。釧路から根室沿岸を通過する際に定置網などで
捕獲される。
この時期のは北上途中の若いサケで、産卵期ではなく策餌期に
あたり白子や筋子が無い。脂が乗っていてうまい。と、
こうなるわけです。
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【2】サケとシャケ
正式和名はサケが正しいのだそうです。
でもシャケと言うことのほうが多いような気がします。
サケもシャケも全国的に使われており、
地域を限定できないようです。
ーーー略ーーー
■ご存知かもしれませんが、こんな説もあります。またもや、
アイヌ語に登場願うわけです。
サケの語源として広辞苑(私のは第2版、古いね。)には、
アイヌ語のサクイベ(夏の食べ物)とサットカム(乾魚)が
挙げられています。
広辞苑の編纂者・新村出(しんむらいづる・1876-1967)は、
『東方言語史叢考』(1927年)でサケの語源のアイヌ語説を
述べていますが、要約すると次のようになります。
1.サクイベ(夏の食べ物)→シャケンベ→サケ
2.サトカム(乾 魚)→サッカ→サカ→サケ
そして、1.が適するとしています。
さらに、アイヌ語学で有名な言語学者、金田一京助
(1882-1971)は『国語科学講座IV 国語学』(1933年)
の中で次のように記しています。
sak-ipe(サキペ・シャキペ)→サケンベ、
シャケンベ→サケ、シャケ
金田一はこれはマス(鱒)を意味する言葉だとしています。
サケとマスについてはあとでお話します。
アイヌ語では「s」と「sh」の区別が無くて、、
「サ」も「シャ」もいっしょなんだって。だからどちらにも
聞こえるってことですね。
これは、サケかシャケかについての
論争(だれもしてないか。)に終止符を打つような見事に
決まる説ではありませぬか。
で、あみ亭おやじの結論は、
「サケもシャケも語源はアイヌ語、サケでもシャケでも
同じこと。」
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【3】サケとマス
鮭は本来「フグ」と読むのだそうですが、室町時代にはすでに
「サケ」と呼ばれていたようです。
奈良時代の『常陸国風土記』(710年)には鮭の本字である,
魚偏に生「魚生」(←一文字)が、『出雲国風土記』(733年)
には「鮭」とともに、「麻須」(マス)が出てきます。
鱒(マス)は、国字で、天子様にささげる「尊い魚」という
意味。聖武天皇のころ(天平15年)にマスを献上した記録が
あり、皇室の式礼に関係深かったようです。
そのサケとマスですが生物学上においては違いが
無いのです。
かつては、サケはシロザケで マスはサクラマスに代表されて
おりました。
明治以降、さまざまな種類のサケ科の魚が海外からも入る
ようになり名称が混乱してきたようです。
英語名を訳すときsalmon(サーモン)をサケとし、
trout (トラウト)をマスとしました。
サケの仲間でsalmon(サーモン)とは一生のある時期、
海に出るもの(降海)でtrout (トラウト)は一生、淡水で
生活するものです。
しかし、日本語でも英語でもサケ・マスの区別の曖昧さは
残っております。
たとえば、上の定義でいえば降海性であるサクラマス(和名)
はサーモン(=サケ)でしょう。
英名はcherry salmon ですもの。
現に和名マスノスケ(鱒之介)はキングサーモンという名の
ほうで流通していますでしょ。
では、一見矛盾した名前のシートラウト(sea trout),そして
サーモントラウト(salmon trout)ってお分かりですか。
sea trout は降海したブラウンマス。salmon trout は
海面養殖のニジマスのことです。
こんにち、サケとかマスなどと区別する必要は無いのかも
しれません。マスマスの混乱は サケられられない 事と
なりマスので。
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【4】あとがき
♪ Autumn In New York (w&m) Vernon Duke
■ニューヨークのすし屋ではサーモン スキンロール
というのがはやっているんだって。鮭の皮を焼いたのり巻き
なんだってね。
■近頃は「マスノスケ」っていいませんね。
いい響きなんですけれど。鮮魚売場などでは
大概「キングサーモン」ってかいてあります。
マスよりサーモンのほうが印象がいいのでしょうか。それなら
いっそのこと『王鮭』とか『鮭王』の名で売り出したら
いかがでしょう。
洋食屋さんが「キングサーモンのポワレ」なら、こちらは
「王鮭の蒸焼」。
やはり「鱒之介の蒸焼」のほうがいいかな。