聖ペテロの魚、車鯛。そして謎。
いらっしゃいませ。
『おやじ、以前から訊こうとおもっていたんだが、、』
へい、何なりと。
『屋号、「あみ亭」の由来はなんだい。』
当ててみてくださいな。
『おおかた、魚網の網から採ったんだろう。それとも
フランス語のami(e)(アミ=友人)から、かな』
いえいえ。実はね、インターネットでの店ですから、
あみ(net=網)亭というわけでして。
ついでですからご披露しておきますが、私の姓の 叶 は、
「夢が叶うように」って、両親がつけてくれたんですよ。
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【1】十二使徒の長、聖ペテロの魚
【2】謎
【3】さらに謎が
【4】さらに、さらに謎。
【5】さらに、さらに、さらに。
【6】酔中花(あとがき)
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今、東京国立近代美術館 では生誕120年を記念して
「藤田嗣治展」が開かれています。(5/21まで)
昨年のこの時期には、「ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展」が
国立西洋美術館で開催されていました。
ラ・トゥールはキリストと十二使徒の連作が有名ですが、
藤田にも十二使徒を描いた壁画があります。
藤田は晩年キリスト教に帰依し、ランス大聖堂で洗礼を受け、
レオナール・フジタとなります。
シャンパンで有名な、マム(Mumm)社の出資による礼拝堂、
ノートル=ダム・ドゥ・ラ・ぺに十二使徒のフレスコ画を
描きました。1966年。
十二使徒の長、キリストの最初の弟子として選ばれたのが
聖ペテロ。キリストの死後、福音の宣教に尽力し、
初代ローマ教皇となったわけです。
やがては、ローマでネロの迫害により殉教。
その殉教の地に建てられたのがヴァチカンの
サン・ピエトロ大聖堂。
聖ペテロはキリストによってつけられた名で、元はシモンという
漁師でした。
「マタイ伝福音書」(17章24~27節)に「貢の銭」という
物語があります。
カペナウの町に着いたキリストと弟子たちに、徴税吏は税を
要求します。キリストはシモン(ペテロ)に 命じるのです。
『海に往きて釣り糸をたれ、初めに上がる魚を捕れ、
その口を開かば銀貨一つを得ん、それを取りて
我と汝とのためにおさめよ』
この物語に因んで、聖ペテロと呼ばれる魚があります。
フランス語でサン・ピエール(Saint Pierre)
イタリアではサン・ピエトロ (San Pietro)。
フランス料理でも、イタリア料理でも頻繁に使われている魚
です。
この魚には、聖ペテロが触れた指の跡が黒い斑紋として残って
いるのです。
あれは、銀貨の丸いかたちが魚の表面に現れているのだという
お話もありますが。
ね。
「なんだぁ。マトウダイじゃぁねえか」
ご存知でしたか。
斑紋が弓矢の的のようだから、日本では「的鯛(マトウダイ)」。
あるいは馬みたいな顔してるから、「馬頭鯛(マトウダイ)」。
ウチの店では、富山から仕入れているので、
「車鯛(クルマダイ)」。富山ではこう呼ばれています。
刺身、昆布締め、焼、煮、蒸、揚げ、と何でもござれの白身魚。
刺身は今日@1260円です。
マトウダイの英語名は「target dory」とか「John dory」です。
「target」はまさに「的」。日本語の的鯛と同じです。
「dory」はマトウダイ科の魚の総称のようですから
よしとして、
「John」のほう。
十二使徒の一人に「聖ヨハネ」がいます。
ヨハネの英名がJhon です。やはり元漁師です。
名前はややこしいですね。ヨハネを例に取れば
以下のとおりです。
ヘブライ語:ヨーハーナーン(Johanan)
ギリシャ語:ヨハネ(Johannes)
ラテン語 :ヨハネス(Joannes,Johannes)
英語 :ジョン(John)
フランス語:ヨハン(Johan)
スコットランド語:イアン(Ian)
アイルランド語:ショーン(Sean)
私が調べた範囲では、聖ヨハネと的鯛の関連がでてきません。
困った。
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ギリシャではマトウダイは「聖クリストフォロスの魚」と
呼ばれているそうです。またもや「聖」です。
聖クリストフォロスは救難の聖人とか旅の守護神など
として西欧の人々には親しまれています。
芥川龍之介の小説、「きりしとほろ上人伝」(1919年(大正8))
でご存知の方もいらっしゃいましょう。
この小説の下敷きはヤコブス・デ・ウォラギネ(1235-98)の
「黄金伝説」とされています。
クリストフォロスは洗礼を受ける前はレプロブスという
名です。この世で最も偉大な主君に仕えようと旅に
出ます。
旅の途中で、巡礼者のための川渡しの仕事に従事します。
ある日、幼子に川渡しを頼まれ、この子を背負って
川に入ります。すると突然水かさは増し、その子は
大岩のように重く、まるで「全世界を背負ったよう」です。
幼子はいいます。
「あなたは全世界を背負っただけではなく、世界を創造した
ものも背負ったのです。わたしこそがキリストなのです」
居酒屋おやじのとは違って、芥川の文章はもっと格調高い
のですが、
* * *
「さもあらうず。おぬしは今宵と云ふ今宵こそ、
世界の苦しみを身に荷(にな)うた『えす・きりしと』
を負ひないたのぢや。」と、鈴を振るやうな声で申した。
(「現代日本文学大系43芥川龍之介集」筑摩書房)
* * *
以後、レプロブスはキリストを師と仰ぎ、
名をクリストフォロスに改めるのです。
クリストフォロスはギリシャ語で「キリストを背負う者」という
意味なのですって。
で、レプロブスは幼子のキリストを背負って川を渡るときに、
魚を持っていました。
それが的鯛だというのです。
あの丸い斑紋はクリストフォロス(レプロブス)の
指のあとですって。
これが「聖クリストフォロスの魚」のいわれです。
聖ペテロの指跡じゃあなかったのかい。
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マトウダイの学名は ゼウス ファベル(Zeus faber)。
そう、
女神や人間の女との間に、ヘラクレスなど
多数の子供たちをもうけたことになっている、
ギリシア神話の最高神ゼウス。
ゼウスはローマ神話ではユピテル(ジュピター)。
またしても偉大な名がマトウダイに。
生物の学名は世界共通で、ラテン語あるいはラテン語に準ずる
語で表記されます。Zeusが属名で、faberが種小名です。
姓と名のようなものでしょう。
ファベル(faber)はラテン語で職人という意味らしいのですが。
この魚の学名にゼウスの名が なぜ冠されているのかが
わかりません。
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先ほどのマタイの福音書のところで出てきた町、「カペナウ」。
この町の南にあるガリラヤ湖でペテロは件の魚を釣り上げる
わけですね。
でもね、ネットで調べてみたらガリラヤ湖は淡水湖でした。
そして、ヤコブス・デ・ウォラギネの「黄金伝説」で
レプロブスが件の魚を手にしていたのは、川の中でした。
ありえねぇ~。(注・当世若者言葉)
マトウダイは海水魚ですもの。
だけどね、イスラエルへのパック旅行の案内などでは
「昼食はガリラヤ湖畔のレストランで聖ペテロの魚を
どうぞ」なんて書いてあるよ。
これは「ティラピア」という魚で、彼の地では、
これが「聖ペテロの魚」なんだって。
↓
http://en.wikipedia.org./wiki/Tilapia
似てねぇ~。(注・当世若者言葉)
マトウダイに、似てもに似付かねえやぃ。
ティラピアって言う魚は「カワスズメ」の一種で、
オスは口の中に卵を銜(くわ)えて孵化させるのだそうです。
やがて、孵化された稚魚は口から外へ泳ぎ出る、この様を
口から銀貨を吐き出す魚になぞらえているのかも。
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【6】酔中花(あとがき)
■♪Don't Explain (邦題:言い訳しないで)1946年
(w)Arthur Herzog Jr.(m)Billie Holiday
■聖ヨハネと的鯛の関連、そして学名のゼウス、調べてみたん
ですけどねえ。言い訳するのじゃございませんが、時間切れ。
そろそろ、わたしもお酒の時間ですから。
■的鯛をおろすときには鋭いヒレ骨と棘に気をつけてください。
■調理のときは、火を入れすぎぬよう、注意なさってください。
ムニエルでもグリルでも 過度に火が入ると、少しパサつきます。
■初めてのお客様、有難うございました。
今日のお味は、、、、
少し濃すぎましたか。申し訳ございません。
これに懲りずに、
末永いお付き合いのほど よろしくお願いいたします。
また、おちかいうちに。
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