■水飯(すいはん)
2005/7/19 (火)005号
◎水飯・告白・おいしい水◎
◆〔水飯(すいはん)〕と呼ばれる、ご飯の食べ方が
あります。昔の人は夏になると、これをよく食べたそうです。
◆きょうの品書き(目次)
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【1】水飯(すいはん)
【2】きょうの賄い・じゃこ山椒煮
【3】わが告白・そして、生姜のソルベ
【4】酔中歌(編集後記)
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【1】水飯(すいはん)
ご飯に冷水をかけて食べるだけ。夏の暑さの為、食欲も
失せたとき、井戸からくみ上げた、冷たくて、
うまい水をかけると何とか喉を通った
わけでして、これを 水飯(すいはん)と呼んだのです。
以外に古くからあるようで、
たとえば 〔源氏物語、常夏の巻〕 には、
〔いと暑き日、東の釣殿にいで給ひて(ー略ー)、
ひ水召して、水飯などとりどりにさうどきつつきくふ〕
とあります。
〔枕草子〕や〔栄花物語〕にも水飯が出てくるそうですが、
水飯ダイエットのお話が〔今昔物語〕にありますので、
ご紹介いたします。
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◆ 今昔物語集 巻第二十八 三条中納言水飯を食う話
第二十三
〔今は昔、三条中納言と云ひける人ありけり。〕
原文はここまで。以下は居酒屋おやじ流現代語訳要約版。
三条中納言、名を藤原朝成。知識豊富、財力豊か。
思慮深く、肝っ玉太く、体も太く、肥満で苦しみ、
医者に相談する。
医者の処方は、〔冬は湯漬け、夏は水漬けのご飯を
召し上がれ〕と。
ならばと、中納言、水飯の用意をさせたが、
その副菜がハンパじゃあない。3寸(約9センチメートル)の
干し瓜が10個。大ぶりの頭付き鮎鮨(あゆすし)が30。
これを全部平らげ、大きな椀に飯をうず高く盛り上げ、
水を少々注いで、2度ほどかき回し、たちまちのうちに
平らげ、お変わりを所望。
こりゃダメだと医者は退散。中納言、益々太って、
相撲取りみたいになったとさ。
以上。
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◆水飯のままでも良いのですが、こんな食べ方をしましたら、
今どきの人たちにも喜ばれるのではないでしょうか。
じゃこの山椒(さんしょう)煮をのせて、
水飯をつくるのです。
ご飯(できれば炊き立て)を、笊(ざる)に乗せ水を
かけて、粘りを洗い流します。その飯を椀に盛る。
半分より少なめがいいでしょう。
それに、じゃこの山椒煮をのせて、お気に入りの水を
かける。これだけ。飯を洗うときも、お気に入りの水を
使えば更によし、ですが贅沢がすぎるかな。
お気に入りの水と申しましたのは、ことに水飯の場合は
水のおいしさが決め手ですので。近ごろの水道水では
チョッとうまくないかな。
じゃこの山椒煮は市販品でもいいのですが、ご自分で
おつくりになったら、より旨いものができますよ。
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【2】きょうの賄い・じゃこ山椒煮
では、じゃこの山椒煮の作り方です。
私のところでは毎年、実山椒(みざんしょう)が
出回る時期に(6月ごろ)1年分を煮て、保存しております。
ご家庭では、市販の水煮山椒がよろしいでしょう。
1.じゃこをザルに入れたまま、水の中で、汚れを取る。
塩気もぬける。 水を切っておく。
2.底の広い鍋で、酒、醤油、みりんを沸騰させ、
山椒を入れる。
3.さっきの水を切ったじゃこを入れ、時々掻き混ぜ、
弱火で煮つめていく。
4.煮汁がほとんどなくなったら、
キッチンペーパー(あれば経木)を敷いた バットに
平らに広げる。
5.表面が乾いたら、掻き混ぜる。時々、敷いてある、
キッチンペーパーを 取り替える。この掻き混ぜ作業は
4、5日間毎日やって乾かして下さい。
材料の目安です。キチンとつくれば1,2週間は
日持ちする筈ですから、少し多めにしましたが、
適宜調節してください。
ちりめんじゃこ:500g。 実山椒:70g。
酒:550cc。
薄口醤油:15・!82モメB みりん:55cc。
この、じゃこ山椒煮は水飯用のみではありません。
あったかご飯といっしょでも、お茶漬けでも旨いんです。
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【3】わが告白・そして、生姜のソルベ
◆始めに告白。
歳をとってから、この喜びを知ってしまいました。
男として恥ずかしながら欲望を抑えきれないのです。
〔七つ下がりの雨は止み難い〕とか申しますでしょう。
まさしく、私がその状態でありまして、抜き差しならぬ事と
なってしまいました。
いえ、色恋の話ではなくて。甘味のことです。
色恋のほうが面白そうだから、そっちをやれと仰るんですか。
一つや二つ無くはないんですが、また改めてということで、
甘いものの話をつづけましょう。
タバコを止めましてから、六,七年経ちます。
功罪は両方ありましょうが、功のひとつは、甘いものの味が
わかるようになったことでしょうか。
タバコを止めれば、甘いものの味がわかるようになるのか
どうかは、本当のところはわかりません。
〔俺はタバコぐらいで物の味がわからなくなるような、
柔な舌じゃあねえ。〕
そういう方も、もちろんいらっしゃいます。
若いころ、甘いものを口にしなかったのは カッコつけて
いただけなのかもしれませんが。近ごろは和菓子も洋菓子も
気に入りの店までわざわざ出向くこともあります。
先日、知り合いがやっているフランス料理屋へ
行ったんですな。
居酒屋おやじだってたまには行きますよ。ところが食事が
終わっても、私の前にだけはデザートが運ばれてこない。
以前は甘いものを断っていたことを
大将(ハイカラにいうとシェフ)が覚えていて気を
利かせたんだそうです。どんでん がきたことを説明して
デザートもおいしくいただきました。
で、家庭でもできる
夏向き、さっぱり、簡単、生姜のシャーベット(ソルベ)を
大将(シェフ)から聞いてまいりました。
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◆量は5人分くらいの目安。
生姜(土生姜)は洗って皮付きのままおろし金でおろす。
布に包ん絞る。絞り汁約30cc。(土生姜約、小1個位か。)
鍋に600ccの湯を沸かし、グラニュー糖150gを入れ、
溶けたらボウルにあけ、底面を氷水につけて冷やす。
さっきの生姜汁30cc、レモンの絞り汁15cc、
白ワイン45ccを足して、かき混ぜ冷凍庫で凍らす。
固まったら取り出し、スピードカッターでネットリさせ、
また冷凍庫で凍らす。1,2時間経ったら、
もう一度スピードカッターにかけて冷凍庫へ。
飾り用の生姜のかけらをつくります。皮をむいた生姜を
薄くスライスして熱湯に通す。小鍋で水100ccを
沸かしグラニュー糖15ccを加えた中にさっきの
生姜スライスを入れて弱火で少し煮詰める。そして冷やす。
冷やしておいた器にシャーベットを盛り、上に煮詰めて
冷やした生姜のかけらを 1,2片かざるだけ。
スピードカッターなければ、スプーンで掻き混ぜ、
冷凍庫へ入れ1時間。
これを3回ほど繰り返す。空気が良く混ざれば、滑らかな
舌触りのシャーベットが出来上がる。
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■ さっきの〔七つ下がりの雨は止み難い〕の説明しろ
てんですか。
こんな言葉、お客さんのようなお若い方は、お使いに
なりませんよね。
お話しますけれど、長いですよ。眠らないでください。
焼酎もう一杯おつくりします。あたしのおごり
じゃあありませんよ。
七つ下がりは現代の時刻で言えば午後4時ごろ。
午後に降り始めた雨はなかなか止まない、降り続く。
人生の午後、中年になって覚え始めたこと、
滅多に終わらずあとを引く。特に遊びごとや
色恋沙汰(いろこいざた)。
若いときに遊んでいた連中より、年取ってからナニに
夢中になったら怖いよと、あたしに対しての戒めてとこかな。
大丈夫ですよ。あたしにも2つや3つあるって、
申し上げたでしょう。
ん。さっき言った数と違ったかな。
江戸時代の時刻は少し難しいですよ。例によって、
端折りますね。
まづ、1日を12に分け、十二支(じゅうにし)を
当てはめます。
子・丑・寅(ね・うし・とら)・・・・ていうあれ。
年がら年中てことを四六時中(しろくじちゅう)と
いうでしょう。
4×6=24時間だから今はこれでいいんです。
江戸時代は、二六時中といったんですって。
2×6=12刻ですから。
この時代の呼び方で今に残っているもの、
たとえば〔正午〕は午の正刻(うまのしょうこく)の略、
〔午前〕〔午後〕は午(うま)の刻の前、後
ということです。
さっき、甘いもののお話しましたが、
〔お八つ〕というのもこの時代の呼び方。
時刻を数で呼ぶときは、子(ね)の正刻を九つとして、
これが基点。
次の丑(うし)の正刻は八つ。9×2=18。
十の位を省いて、八つとした。
では寅(とら)の正刻は。正解9×3=27。
十の位を省けば、七つ。
以下、六つ、四つ、三つ、、、と続き
午(うま)の刻で九つにもどる。
間の時刻を九つ半、八つ半、、、と言います。
ナゼ、基点が九つなのか。
陰陽道(おんようどう、おんみょうどう)では
最高にめでたい数だそうな。
同じ数の刻が2度づつあるので、区別する語をつけます。
夜の九つから明け六つまでを〔暁〕
明け六つから五つ半までを 〔朝〕
朝五つ半から八つ半までが 〔昼〕
昼八つ半から暮れ六つまでが〔夕〕
暮れ六つから夜九つまでを 〔夜〕。
今暁の八つ半、とか昨夜四つ半のように使います。
ところがですね、江戸の庶民は日の出、日の入りを
基点に
明け六つ、暮れ六つを決める不時法を用いたりして、
幕府天文方とはかなりのずれが生ずることもあるようです。
1日を12等分して一刻が単純に2時間ということでも
ないようですし、かなりややこしいものです。
お客さん。やっぱり、寝ちまいましたね。
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【3】〔酔中歌〕(あとがき)
きょうの、水飯も生姜のシャーベットもおいしい水で
つくってください。
ガキのころは、井戸水やら湧き水など
いい水があったなあ。旨い水が。
◆◆♪〔おいしい水〕AGUA DE BEBER
(Antonio Carlos Jobim)
邦題は〔おいしい水〕ですが原題のポルトガル語は
〔飲み水〕という意味なんだってね。湧き水に感銘を受け、
自然の神秘をたたえてつくった曲だって。
おいしい水、てのは酒のことだと、
ずうーと思っていましたよ。
今でもそのように聞こえていますよ。
甘いものもいけるけど、
酔っ払いの居酒屋おやじですから。
あたしは酒をたたえて唸りますね。
♪アガジベベ~アーガジベベ~カマラ~ てかっ。
失礼しました。
懲りずにご来店ください。
ありがとうございました。