■第020号■飯蛸の×××

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□■□■ 居酒屋おやじの知ったかぶり。料理と酒とウンチクと ■□■□
■□■ 第020号 ■□■
               2006/2/1 (水)
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 いらっしゃいませ。
 まだまだ寒さ厳しいのですが、2月になりますと手前どもでも、
春らしい品書きが登場します。
 今朝、魚河岸でイイダコ(飯蛸)を仕入れてまいりました。
煮つけか炊き合わせでいかがでしょうか。
   『イイダコにはイイ(飯)詰っているんだろうな。
   イイの無いイイダコなんざあ
   この店のおやじみたいなものよ。
    。。。。。           頭がからっぽ。 』
 たっぷりと、イイが入っておりますよ。お言葉ですがお客さん、
イイが入っているあそこは頭ではなく、タコの胴体ですぜ。
  
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◎今日の品書き(目次)◎
1.いいだこのいい、いいかんじ
2.ぷちぷち
3.まぐわい
4.つけたし
5.酔中歌(あとがき)
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1.いいだこのいいいいかんじ
 ■私なんぞも日常、タコの頭なんて言ってしまいますが、じつは 
あそこは胴体ですよね。頭足類というくらいですから、足のすぐ上が頭です。
正確に言えば足と思われている部分だって、腕なんですが。
戯画や風船などで はち巻をしている部分は本当は胴体ですから、
タコの鉢巻ではなく、タコの腹巻とかタコの腰巻が正しいのでしょう。
どうでもいい事ですが。
 ■イイダコ(飯蛸)は秋口から獲れ始め 市場にも出回ります。旬は、
アタマじゃなかった、胴に卵を抱えた春先からでしょう。歳時記でも飯蛸は
春の季語となっています。
その卵は、大きさも見た目も飯粒(めしつぶ)そっくり。
それでイイダコ(飯蛸)の名があります。卵を持った魚は「子持ち」と
言いますがイイダコの場合は「いい持ち」と呼んでおります。
メス1ぱいが抱える卵(イイ=飯)の量は300から400粒と、
マダコ(真蛸)の十数万といわれる大量産卵に比べると意外に少ない。
マダコ(真蛸)の卵は、藤の花が咲いたような房状になっているところから
海藤花(かいとうげ)という名がついております。調理はマダコ本体から
この卵を取り出して、塩漬けや酢の物にしたり、煮付けたりします。
イイダコは イイが詰まったまま、丸ごと煮ます。盛り付けには縦半分に
切ることもありますが、それは煮たあとです。
オスは「スボケ」と呼ばれて、河岸でも値が低く(メスの1/4くらい)、
冷遇されています。卵に栄養がとられない分、身はオスのほうが旨いと
いう方もいらっしゃいますが。
 本当は価値あるのに冷遇されて、、、、、ここんとこ声を大にして、、、
言ってもムダか。
 ■夏目漱石はイイダコが大好きで、食べ過ぎて病院へ運ばれた、という話を
読んだ記憶があるのですが、見つかりません。
(たぶん、半藤 一利・著『漱石俳句探偵帖』)今探していますから、
出てきましたら、報告します。
変わりに「飯蛸」を詠んだ、漱石の俳句5句をご紹介しておきましょう。
    蟹に負けて飯蛸の足五本なり   (明治29年)
    飯蛸の頭に兵と吹矢かな     (明治29年)
飯蛸と侮りそ足は八つあると   (明治41年)
飯蛸の一かたまりや皿の藍    (明治41年)
飯蛸や膳の前なる三保の松    (明治41年)
イイ蛸のイイのぷちぷちイイ感じ (平成17年)※
※最後のヤツ、漱石の句ではありませんからね。詠み人知らず、ですよん。
 
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2.ぷちぷち
 魚介の卵の食感は「ぷちぷち」ですね。イクラも、タラコも、数の子も。
キャビアだって。
 もともとは、この擬声語「ぷちぷち」は何かが燃えてはぜる音を表して
いたんですって。燃える音は今は「パチパチ」だよね。
 たとえば、   「榾(ほた)のぷちぷち燃ふる音・・・」
これは徳富蘆花(1868年-1927年)の『思出の記』にある一節から。
榾(ほた)とは薪(まき)のことです。
次第に 燃えてはぜる音から、外からの圧力で皮膜などがはじける様子をも
表すようになったということです。
やがては、パソコンのマウスでWクリックすることを「ぷちぷち」と表現する
ようになってまいりました。(嘘)
 
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3.まぐわい
 仮に菊路と冬香という名にしておきましょう。ふたりは互いにしっかと
抱き合い、局部に挿入したらば くんずほぐれつの情熱的な営みが 
もうかれこれ2時間以上。延々と。(ゴクッ)
 いえ、イイダコの生殖のおはなしです。
産卵の時期になると、オスは右第三腕が交接腕となります。いわば これが
オスのナニでして、ここから精子を送り出すのです。
メスのナニ(生殖器=外套孔という)は胴のてっぺん(頭のてっぺん)に
あって、オスはここに交接腕をつないで精子を放出する。
その精子は精莢(せいきょう)というカプセルみたいなものに収まっていて、
メスの輪卵管で溶ける。そこで、精子と卵子が合体して受精という事に
なるのです。
菊路と冬香(ともに仮名)は合計16本の腕を絡ませあって離れず、
濃厚な営みを2?3時間にわたって繰り広げるのです。
イイダコは2,3時間ですがマダコ(真蛸)のソレは3日間も続く
そうですから、アナタ,すさまじいほどの激しさですな。
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4.つけたし
■イイダコは「章魚」とか「章花魚」と書くこともあります。両眼の間に
金色の眼状紋があるところからでしょう。紋章の章の字です。
■また「望潮魚」とも書きます。漢字クイズでよく出題されています。
■イイダコ釣りはラッキョウを使う、といわれます。タコテンヤにラッキョウ
を括りつけて、海底で動かせて誘うのだそうです。実はこれ、イイダコは
白色指向性が強いというだけで、特別にラッキョウを好きなわけでは
ないんだって。
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5.酔中歌(あとがき)
■♪What A Diference A Day Made (邦題:縁は異なもの)
                (w) Stanley Adams 、(m) Maria Grever
■今日はなぜか英字新聞をお持ちのお客様が多くお見えのようですね。
 お越しいただき、ありがとうございます。
 どうぞ末永くご贔屓くださいますよう。
 何なりとご注文くださいませ。
■冒頭に「煮つけ か 炊き合わせ で」と申しました。「炊き合わせ」は
 2種以上の材料を別々に煮て、ひとつの器に盛り合わせることです。夫々の
 材料の持ち味を活かすためです。
 
■菊路と冬香の名は渡辺淳一の「愛の流刑地」の主人公たちの名前を
 拝借しました。日経新聞の朝刊に連載されて、オジサンたちに
 大人気の小説でしたが、昨日で終わってしまいました。
  
■今日もありがとうございました。またおちかい内に。
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□■ 居酒屋親爺の知ったかぶり。料理と酒とウンチクと ー第020号ー
■□ 編集兼発行人  叶 彦一
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