■第13号 ■塩加減

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□■□■ 居酒屋おやじの知ったかぶり。料理と酒とウンチクと ■□■□
■□■ 第13号 【塩加減】■□■
               2005/10/3 (月)
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いらっしゃいませ。秋らしくなってまいりました。
 しめ鯖はいかがでしょうか。ちょうど今できあがったところです。
いえ、ブランド鯖ではございません。富山湾のものですが、鮮度とお味は 
保障つきでございます。
 近頃ブランド魚介が多く出回っております。前号で書いたサンマも
釧路の「青刀(せいとう)」や歯舞の「舞さんま」などお目にしたこと
ございましょう。
 このブランド魚介の流行に火をつけたのが豊後水道の「関鯖、関鯵」
でしょう。他にサバでは四国の土佐清水市の「清水サバ」。
神奈川県三浦市松輪の「松輪サバ」。
 それから屋久島の「首折れ鯖」、これはマサバではなくゴマサバですが
獲れたてなら刺身で食ってもうまい。屋久島へ訪れたさいにはお試しください。
 鯖がお嫌いな方でも、しめ鯖ならいけるという方いらっしゃいますね。
 しめ鯖をつくった事おありでしょうか。新鮮な鯖を3枚におろし、
強塩(ごうじお)をあて、時間を置き塩を洗い流してから酢に漬ける。
これだけのことですが、
重要なことは新鮮な鯖であることに尽きます。わたしのところでは富山から
朝獲れのものを航空便で送ってもらっております。夕方4時ごろ到着。
3枚におろして強塩1時間、酢に漬けること20分。5時の開店時間には
間に合いませんが、お客様には飲みながらお待ちいただいております。
強塩の時間や酢に漬ける時間は、作り手によってまちまち。酢には昆布や
鷹の爪をいれることもありましょう。
強塩は5?6時間、その後2日間冷凍するという方もいらっしゃいます。これは
アニサキスという寄生虫症を防ぐためのことでありましょう。
先ほどから、「強塩(ごうじお)」と申しておりますが、これは「べた塩」
とも言いまして、表面が白く覆われるほどたっぷり塩をまぶしつけることです。
べた塩とはべったりと塩をまぶすことから。
 では、今日は塩加減の種類とその呼び方をご紹介いたしましょうか。
「酢」についてはまた別の機会に。
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今日の品書き(目次)
【1】塩加減
【2】酔中歌(編集後記)
【3】delete
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【1】塩加減
 人の体液の成分は海水の組成に似ていまして 成人の体内には、
約20gほどの塩があるんだそうですな。
 塩分控えめ、とよく仰いますが、この塩分は維持していかなければならない
ということです。 成人で1日、10?15g摂取しなければならない。
(厚生省は10gにしなさいといっているそうですが。)
 塩化ナトリウムの純度が高い塩、いわゆる専売塩(生活用塩)よりも
海水のミネラルが残っている自然海塩の方が身体にとってよいのは当然。
 海水には約3.5%の塩類があり、その内の80%以上が塩化ナトリウム、あとは
ニガリといわれるミネラル(カルシウム、マグネシウム、カリウムなど)。
 味も塩化ナトリウムとニガリ成分の割合でかわります。にがりが多ければ
苦味が増し、少なければ塩辛いわけです。
 さっき、専売塩と書きましたが1997年に塩の専売制は廃止になっております。
昨今は、各地の塩や輸入の岩塩などいろいろ出回っておりまして、
驚くほど高価なものもございます。こちらもブランド流行りであります。
 さて、料理において塩は、味の基本であります。
かの北大路魯山人(1883?1959)も記しております。
 「・・・塩には素材そのもが持っている天然の美味を引き出す働きがある。
洋の東西を問わず、料理における最大の眼目は塩の使い方である。・中略・
古来、料理の極意を塩梅(あんばい)といい、手塩にかけるという。塩こそ
あらゆる美味の決めてといって良い。・・」
 塩は
 美味を引き出すだけではなく、他にも調理における効用がございますね。
・水分を引き出して生臭みをとる。(魚や肉)
・ぬめりを取る。(魚介類)
・たんぱく質の凝固を促進、身くずれを防ぐ。(しめ鯖も)
・長期保存に使う。(漬物など)
・しんなりさせる。(野菜など)
・色よく茹でる。(野菜など)
 等々が、おもいつきます。
 それでは、塩加減の種類から。
 ◎塩ひとつまみ
 レシピを読むとに「塩ひとつまみをいれて、、」などとあります。一応
決まっとります。指三本(昔、指三本で総理大臣をおやめになった方、
いらっしゃいましたが、関係ございません。)でつまんだ量。
大体、1gくらい。小さじ1/5。手秤(てばかり)といいます。
計量器を使わずに計るのです。 目ばかりもあります。
 では、塩少々は。・・親指と人差し指2本でつまんだ量ということに
なっております。約0.5g。小さじ1/8?1/10。
 ◎紙塩(かみじお)
 まな板に塩をふり、霧吹きで軽く湿らせた和紙を敷く。その上に
材料を並べ、湿らせた和紙で覆い上から塩をふる。均等に塩を回らせる
知恵。
 ◎ふり塩(じお)・あて塩(じお)・尺塩(しゃくじお)
 ふり塩は
 材料に塩をふることですが、「振る」という語を嫌って、「当て」と
あてたのがあて塩。「スルメ」を「アタリメ」、「胡麻を擂(ス)る」を
「胡麻をあたる」などというのといっしょ。
 塩をふるのには、材料に対してまんべんなくふらなければなりません。
手のひらを斜め上向き、指を少し丸め塩をのせ指のかすかな隙間から
振り落とします。材料に対して30cm(=1尺)上から降るので尺塩。
 ◎ひと塩(しお)
 軽い塩のこと。たとえば鯵の干物とか塩鮭など一般的な塩気のものが
あるとしましょう。それよりも、塩気が少ないことでしょう。
大体1?2%くらい。
 甘塩というのもありますよね。薄い塩味の干物などを甘塩の○○、
として売っておりますが、どの程度の塩加減を言うのかわかりません。
 
 ◎たて塩(じお)
 これも、均等に塩をゆきわたらせる方法です。材料を食塩水に
浸します。海水程度の塩分にします。この塩水を立て塩といいます。
 釣をなさる方は、釣った魚を開いて たて塩につけこんでから
干物をつくった事おありでしょう。
 きゅうりなどの野菜をしんなりさせたり、味付けたりするのにも
つかう方法です。塩分の濃度は適宜、変えますが。
 ◎塩もみ
 材料に塩をふって、しんなりしたら軽くもんで水気を絞ること。
キュウリやナスの塩もみ。蕪の即席漬け。などが代表。
 酢の物に使う野菜などの下ごしらえ にも利用しますが、たて塩
のほうがていねいな仕事といえるかもしれない。
 ◎強塩(ごうしお) ◎べた塩(じお)
 先ほど出てまいりました。
 脂があって身の厚い魚ですと少々の塩では出てきた水分や脂に
流されてしまいます。
 たくさんの塩ですと、魚から出た水分で濃い塩水となり細胞の内部に
到達しさらに水分を引き出します。これで臭みも抜け、身がしまるのです。
 防腐効果もありますし、すでに話しましたように、たんぱく質を凝固させ
うまみ成分を閉じ込めることとなるのであります。
 しめ鯖で言えば、次の作業、酢に漬けたとき、酢が必要以上に入り込むのを
防ぐことにもなるのです。
 ◎呼び塩(よびしお)
 これは、塩抜きをするためにやることです。あるいは塩を抜きすぎない
ためにも呼び塩をします。
 たとえば塩蔵品から塩気を抜きたいときに、真水につけますと、水っぽく
なってしまうことがあります。塩分濃度の差が大きいためです。
 これを薄い塩水(大体0.5?1.5%程度)につけますと、塩分濃度を、一定に
しようと働き、食品のほうの塩分は薄い塩水のほうへ移動するというわけです。
 浸透圧(しんとうあつ)てやつですな。野菜をしんなりさせるのも
浸透圧によるもの。
 野菜の細胞は半透膜(はんとうまく)という膜でおおわれており、その内外
にある液体の濃度が違う場合、両方の濃度が同じになろうとする。
 この同じになろうとする力を浸透圧というのです。
小学校か中学校だったかで勉強しましたね。昔々。
 ◎塩焼き ◎塩ゆで ◎塩煎り(しおいり) ◎塩蒸し
 ・塩をふって焼くのが塩焼き。基本のことですが意外に難しい。材料の
持ち味をいかさねばならぬのですから。
 材料の重さに対して2?3%なんて言われておりますが、そう単純な
ことでもない。材料の鮮度や種類にもよりますし、いつ塩をふるのかだって
影響しますす。焼きはじめる何分前がいいのとか。
 ・塩を加えて茹でることが塩ゆで。枝豆やパスタを茹でるとき
やってますよね。
 私どもは塩を加えて材料を下ゆですることしばしばあります。
アクや臭みをぬいたり色よく仕上げたいときなど。
 ・塩煎り。煎り(いり)の漢字は 炒り(いり) ともかきます。
 焙烙(ほうろく)をご存知でしょうか。今でも荒物屋さんで売っていますが
昔はこれをよく使いましたな。素焼きで出来た浅い鍋です。小さめの土鍋を
ごく浅くしたようなヤツ。
 豆やぎんなんをこの焙烙で煎ったものです。香ばしくて、適度に塩味が
つきますから塩煎りというのもオツなものです。素朴なうまさとでも
申しましょうか。
 ・塩蒸しは魚介類に塩をふってから、あるいは塩水に浸してから
蒸しあげることです。素材の持ち味を活かしてふっくらと仕上げます。
割り下やポン酢などを添えることが多いです。
 中華料理でもありますでしょう。蒸篭(せいろ)に入れて蒸す魚の塩蒸し。
 塩釜焼き も 焼くのですが仕上がりは蒸したものにちかいわけです。
キャンプなどの定番でしょ。塩に卵白や片栗粉を混ぜて練り、材料を包んで
蒸し焼きにします。 
 ◎化粧塩(けしょうじお) ◎ひれ塩 
 化粧塩とは化粧をする前に肌を整えるため顔にぬりつける塩。というのは
ウソですからわすれてください。
 魚を塩焼きするときに背びれ、尾びれ、胸びれなどを広げて形を整え
指で塩をすりつけます。ひれは焦げやすいので塩をつけるのです。
 塩の部分の焼き上がりが白く仕上がってあたかも化粧したよう、で化粧塩。
ひれの部分につけるからひれ塩。
 化粧塩を嫌う方もいらっしゃいます。丸ごと食べるときこの部分の塩が邪魔
だとおっしゃいます。厚化粧は嫌いなんだという方もおいでです。
 ◎塩加減、縷々お話してまいりましたが、今日はこのあたりが
しおどき でございましょう。
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【2】酔中歌(編集後記)
 
 しめ鯖の話をしようとはじめたのですが、途中で塩の話もお届けしたいと
思い、変えてしまいました。
 話は しめ鯖に戻るのですが、これは「酢じめ」なのか「塩じめ」なのか。
「しめる」というのは「水分を減らせて身をしめる」ことです。
 塩でしめる時間が長いから塩じめ かも知れない。でもね、魚を酢でしめる
前には必ず塩じめをするのです。ですから「酢じめ」でいいのかもしれません。
 酢じめの工程には塩じめの作業がふくまれているわけです。
塩は魚肉たんぱく質 の保水性を高めます。その後酢を加えるとたんぱく質は
変性して身がしまることになるのです。
 酢だけですと酸性が強すぎて凝固しにくくなるということです。塩と酢の
共同作用で身がしまるということですな。
 そろそろ私も酒の時間。まづビールを一杯と、つぎに何を飲もうかな。
2種類の酒の共同作用で、、、てナことはないね。酒のことになると、
なんとも しまらないオヤジだね。
 今日もありがとうございました。
■♪Giant Steps (c)1957 (m)John Coltrane
 
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【3】delete
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■□ 編集兼発行人  叶 彦一
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